型もの製作
試作・製品化用語辞典一覧
ABS樹脂の塊を目的の形状に削りだしていきます。型を作る手間がかからないので、短期間に作ることができます。
しかし、ただステンレスといっても、成分の違いによって性質も異なり、それらの数は100を超えるといわれています。金属素材の中から、最適なものを選ぶ。それだけのことでも、大変になるほど多くの素材があるのです。
ケミカルウッドは主にポリウレタンを使って人工的に木材のような性質を持たせた素材です。
硬さなど色々な種類がありますが、木材のように木目はないので加工性に優れ、環境にも配慮した素材といえます。
試作の段階ではデザインや使い勝手を見るために、ケミカルウッドを使って製品の形を検討していくことが多いです。
ケミカルウッドは、発泡剤よりも硬いですがABSなどより加工し安いため、NCマシンとの親和性もよく、形状確認の手段として頻繁に用いられます。
しかし強度的には実用に向かないため、型をとるための原型や、試作のみで扱われるケースがほとんどです。
JISとは日本工業規格のことで、日本の工業製品について統一のきまりを作ることにより異なるメーカーの製品でも組み合わせて使うことができたり、この規格に沿った図面であれば誰が作っても同じものができるといった工業界の標準となるものを様々な分野について定めたものです。
例えば、家庭用のコンセントにはメーカーに関係なく製品をつなぐことができ、電気を供給することができます。これはコンセントの形状や電圧などがJISによって細かく定められ、各メーカーがそれに従っているために可能になっているのです。
製品を開発するときには、試作の段階から、この規格に適合するように細部にわたって検討していきます。
名称:ステンレス鋼
俗称:ステンレス、サス、不銹鋼(ふしゅうこう:「銹」とは、「さび」のこと)
記号:SUS
主な用途:食器類、流し台、液化天然ガスのタンク内装など
解説:ステンレスとは『錆びない』(Stainless)という意味で、1912年に発明されました。
ステンレス鋼は13%以上のクロムを含んだ鋼のことで、このクロムが錆を防ぐ役割をします。クロムが鉄と交わると、表面に100万分の3mmという薄い膜を作って、さびを防ぐ性質を発揮します。この膜はたいへん強く、たとえ壊れてもまわりに酸素があればすぐに再生します。
現在ではステンレス鋼の種類は100種以上あるといわれています。
コンピュータ上で製図をできるCADソフトを3次元で処理できるようにしたものが3D CADです。
分かりやすく言うと、2Dでは縦の線と横の線でしか設計できなかったものが今度は奥行きを含めて物を考えることができるようになったという感じです。
試作の段階で部品の納め方を考える機械設計などではなくてはならないソフトです。主なものに『AutoDesk Inventor』、『Shade』、『ParaLogix』などがあります。
3D CADでのデータ形式にも2D CADと同じようにさまざまなデータ形式がありますが、やはり一番良く使われるのはDXFでしょう。こちらも2D CADと同じく、『Auto Cad』のファイル形式ですが、このソフトが一番普及していることから、このファイル形式も標準となりました。しかし、ソフト間でやり取りする場合に完全に互換できない場合もあり、さらなる改良が望まれています。
冒認出願とは、特許や意匠登録などで、本来は出願する権利のない者が出願することです。
最近中国で、この「冒認出願」が流行っていると聞きます。日本やアメリカなどで既に取得されている特許を、発明者以外の企業や個人が、中国で出願してしまうというものです。
その対策として、中国での販売時期が確定している、いないにかかわらず、優先権を早期に中国でも取得しておくことが必要と思われます。
BRICs(ブリックス)とは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の英語頭文字をつなげた造語です。
これらの国々は、新興経済大国として、今世界の注目を集めています。その理由は、
- 人口の規模と人口増加 (4カ国で世界人口の45%)
- 広い国土
- 豊富な鉱物資源
- 今後の一人あたりのGDP上昇
などが挙げられます。
BRICsは、2003年にアメリカの証券会社ゴールドマン・サックス社が投資家向け報告書のなかで初めて使用して以降、広く使われるようになりました。
その報告書によれば、BRICs諸国が現在のペースで経済発展をつづけた場合、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリアのGDP合計を2039年までにBRICsが上回り、さらには2050年頃、GDPの順位が、中国、アメリカ、インド、日本、ブラジル、ロシア、イギリスの順になるだろうと予想しています。
生分解性プラスチックとは、使用する状態では従来のプラスチックと同程度の機能をもち、使用後に廃棄された時は、微生物により分解され、最終的に水と二酸化炭素になるプラスチックのことを言います。「グリーンプラ」とは、通産省が一般公募して選定した生分解性プラスチックの愛称です。
生分解性プラスチックは主に穀物でんぷん(飼料用のとうもろこしでんぷんなど)を原料としています。透明、不透明、柔らかいもの、硬いものなど、汎用的なプラスチックがカバーしているほぼ全領域で代替えが可能です。
優れた点としては、
- 分解すると水と二酸化炭素になります。(二酸化炭素については、もともと地上にあったものがもとに戻るだけなので、大気中の絶対量は変わらない)
- 燃やした時の熱量が低い。(汎用プラスチックの約半分)
- ダイオキシンに代表されるような有害物質の発生がない。
欠点としては、
- 値段が高い(汎用プラスチックの3倍~10倍)。
- 製造ロットによる素材のばらつきがある。
などが挙げられます。
生分解性プラスチックの種類は、「完全分解型」と「部分分解型」に大きく分けられますが、部分分解型では、素材に含まれる汎用プラスチック部分が残ってしまうため、今では「生分解性プラスチック」と言えば、完全分解型を指すのが一般的です。
名称:高速度工具鋼
俗称:ハイス(高速度=ハイスピードが語源)
記号:SKH
主な用途:フライス、バイト、ドリルなど
解説:高速度工具鋼(SKH)は別名ハイスとも呼ばれ、その名の通り高速切削しても切削性能が劣化しないので、工具用の鋼の王様と呼ばれています。特殊な熱処理を施すことにより高温時にも容易に軟化せず硬度を保ちます。
名称:炭素工具鋼
記号:SKではじまり、炭素含有量や合金の種類によりSKS、SKDなどに分類される
主な用途:ニッパの刃、ねじのタップ、やすり、ポンチなど
解説:炭素工具鋼(SK)は0.6~1.5%の炭素を含有した鋼のことです。炭素の含まれる量で硬度か変わり、打ち抜き型や、斧(おの)、鉈(なた)などは炭素を1%以下に、ヤスリなど硬さが必要なものは1.4%程度のものを使います。
リン・硫黄などの不純物がやや多く、焼き入れしやすいので、低価格の庖丁や洋庖丁などに広く用いられています。
名称:クロムモリブデン鋼
俗称:クロモリ、ハイテンなど
記号:SCM
主な用途:金型・歯車、動力伝導軸、エンジン部品など
解説:クロームモリブデン鋼とはクロム鋼に0.15~0.30%のモリブデンを添加したもので、400~500℃程度の高温でも強度の低下が少ないので、機械構の高温高圧の部分に使われます。
高温での加工も容易なので、溶接したときの信頼性も高く、仕上がりの表面が美しいといった特徴をもっています。
身近なところでは自転車のフレームとしても利用されています。
名称:クロム鋼
記号:SCr
主な用途:プライヤ等の工具、ボルトなど
解説:クロム鋼(SCr)とは、鋼にクロームを0.90~1.20質量%添加した合金鋼のことで、ステンレスの一種です。錆にくく磁石をくっ付ける性質があり、流し台などの錆を嫌う用途に適しています。
ステンレスはすべて鉄と他の金属との合金ですが、クロム鋼には他の一般的なステンレスのようにニッケルが金属が含まれていません。
名称:炭素鋼鋳鋼品
記号:SC
主な用途:レールのポイント部分、電車の連結器、キャタピラーなど
解説:炭素鋼鋳鋼品(SC)とは鋳物として用いるために溶かした炭素鋼を希望の型に鋳込み、形づくったものです。プラスチックの型に入れて成形していくのと同じ考え方です。
名称:炭素鋼鍛鋼品
記号:SF
主な用途:鉄道車両の車輪、発電機のタービン軸、タンカーのプロペラ軸など
解説:炭素鋼鍛鋼品(SF)とは鍛冶屋さんのように炭素鋼を機械で叩くことにより成形していくもので、切削して成形した場合よりも金属の強度が高くなります。特に硬度、強度が求められる製品に使われます。
名称:機械構造用炭素鋼
記号:S-C
主な用途:ベアリング、ドリルチャック、レンチ・工具類など
解説:S-C材のSはsteel(鉄)、Cは、炭素を表し、-(ハイフン)の部分には、炭素の割合を示す数値が入ります。たとえばS45Cという材料の場合、炭素の含有量は0.45%になります。炭素の役割は、焼き入れ硬化です。炭素の割合が多くなるほど、焼き入れ硬さは高くなります。S-C材の炭素量は、0.08%から0.61%までそろっています。
名称:一般構造用圧延鋼
俗称:ナマ、鉄など
記号:SSほか、形状などによりSD、STK、SAPH等に分類される
主な用途:車のホイール、鉄筋、建築現場の足場、道路標識など
解説:試作、製品化で加工する鉄の中でも、一番多いのがこのSS材です。SSの、最初のSは、steel(鉄)を、後のSは、structure(構造物)を表しています。SS材の代表ともいえる、SS41という材料があります。その41という数字は、引っ張り強さが41kgf/mm2以上あることを表しています。
名称:AAS(アクリロニトリルスチレン共重合体・耐候ABS)
記号:AAS
主な用途:車のホイールキャップやラジエーターグリル、道路標識、屋外ユニットなど
解説:AAS(耐候ABS)は、ABSにアクリルゴムを混ぜてより耐候性を高めたものです。自動車の外装部分のプラスチック、建材や家電の屋外での使用が想定されるものに使われます。
AASは比較的新しい素材で、ABSよりは若干価格が高いようで、これまであまり試作では利用してきませんでしたが、より高い品質の製品を製品化するには今後積極的に利用していきたいものです。
名称:低密度ポリエチレン
記号:LDPE
主な用途:エアキャップ(プチプチ)、ガス管、輸液袋、フィルムなど
解説:低密度ポリエチレンは文字通り構成している成分の分子の密度の低いポリエチレンで、透明度が高く、つやがあり、裂けにくいといった長所がある反面、耐薬品性に劣り、約110℃程度で解けてしまうというように耐熱性も高くはありません。
防湿性、耐水性が高いことから、ゴミ袋や食品の包装などによく使われます。電気製品の製品化のための試作の段階で必ず使われる電気配線の皮膜もこの素材でできています。
名称:高密度ポリエチレン
記号:HDPE
主な用途:スーパーのレジ袋、テープ類、網類、コンテナ、ボトル・タンクなど
解説:高密度ポリエチレンは低密度ポリエチレンと同じ原料で分子の密度をより高くした素材です。
LDPEにくらべ耐熱性も高く、有機溶剤にも溶けにくくなっているので、灯油をいれるポリタンクにも使われます。
あらゆる製品の様々な部分に使われ、製品化する際には試作の段階から、同じポリエチレンでも低密度ポリエチレンにしようか、高密度ポリエチレンにしようか、といった細かなところまで吟味していきます。
名称:ポリスチレン
記号:PS
主な用途:食品容器、緩衝材、保温材、コンデンサなど
解説:ポリスチレンは、製品などの梱包などでよくお目にかかる発泡スチロールでおなじみの素材です。スチレン樹脂は、絶縁性、耐水性、耐薬品性に優れ常温で硬いのが特徴です。
樹脂自体は透明ですが、容易に美しく着色することができ、見た目の良い製品をつくることができるのもポリスチレンの長所です。ただし熱に弱く、耐衝撃性が低いので、落下したりすると割れやすいという短所もあり、設計、試作には注意が必要です。
名称:ABS(アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体)
記号:ABS
主な用途:家電製品、スーツケース、自動車内装、OA事務機器など
解説:現在、身の回りにあるプラスチック製品の中でもっとも利用されているのがこのABS樹脂です。見た目もよく、強度があり、加工性にすぐれているので、あらゆる場所に使われています。
家電製品などのボディはこの樹脂で作られていることが多いです。その他にも車や建材のプラスチック部分でも多く使われています。
金属で型をつくり、その中に流し込んで形を整えていく製法で、大量生産にも向いています。
名称:ポリプロピレン
記号:PP
主な用途:バンパー、工具箱、発泡天井、不織り布など
解説:ポリプロピレン(PP)は軽量で耐熱性が良く、耐薬品性に優れ、艶があるのが特徴です。
ポリプロピレンはその構造を変えることにより、「高剛性」「透明性」「耐衝撃性」などの特性を付与する事ができるので、多くの用途に利用されています。
試作、製品化においてももっともよく検討される素材のひとつです。
名称:ポリエチレン・テレフタレート
記号:PET
主な用途:ペットボトル、人工血管、延伸フィルム、スーパー繊維など
解説:ポリエチレン・テレフタレートは木や紙と同じ炭素・酸素・水素の三元素からできています。ですから食品類の容器としても安全なだけでなく、燃やしても二酸化炭素と水になるので、環境を意識したリサイクル素材として定着しています。
これからの製品化、試作の現場でも環境問題を意識し、材料選定などを通して積極的に環境に良い素材を採用していかなければいけません。
ポリエチレン・テレフタレートは今では『ペットボトル』という呼び名が一般にまで浸透しているほど身近な素材です。ちなみに日本で最初のペットボトル製品は醤油の容器だったそうです。
名称:ポリカーボネイト
記号:PC
主な用途:CD、ヘッドランプレンズ、アイロンタンク、OA機器のシャシーなど
解説:ポリカーボネイトは耐熱、耐寒性に優れ(-100~135℃)、耐衝撃性にもすぐれています。その強さは、ある程度厚みを持たせれば、拳銃の弾丸も止めてしまうほどです。透明度の高さもガラス並み(キズが入らなければガラス以上)なので、最近は「防犯用ガラス」として窓枠に使われることもあります。
このような優れた性質から、あらゆる試作・製品化において、ポリカーボネイトでなければ作れない部品があることもうなずけます。
CADとはコンピュータによる設計支援ソフトのことで、このうち2D CADは平面的な図形を描くことができ、主に設計図を作成するときに使います。つまり製図板がコンピュータの中にあるようなもので、自由に線を引いたり、修正したりすることができるソフトです。
主な2D CADには『Auto Cad』、『Turbo Cad』、『Vectorworks』などがあり、それぞれに特徴があります。
現在のものづくりにおいては、試作の段階から量産まで、なくてはならない道具になっています。
Auto Cadによる機械設計図
ADでのデータ保存形式で一番使われているのはDXFでしょう。『Auto Cad』で使われている保存形式ですが、事実上の業界標準となっています。
ただし、ほとんどのCADソフトで読み込むことができるといっても、異なるソフトでは完全に読み込めない場合もあり、データのやりとりには注意が必要です。
主な2D CADのデータ形式(拡張子)
- dwt:AutoCadテンプレートファイル
- dwg:AutoCadファイル
- dxf:AutoCadファイルだが、より互換性を高めたもの
- dc3:DynaCAD用ファイル
- ed:EASY DRAWファイル
- cad:I-DEAS用ファイル
- jwc:JW_CADのファイル
- jww:JW_WINのファイル
- dft:Solid Edge用ファイル
- P21:STEPのルールに準拠したファイル形式
- mcd:VectorWorksファイル
- sta:VectorWorks用テンプレート
- atc:アーキトレンドファイル
- c2d:オフェリア用ファイル
- jhd:花子ファイル
- bfo:汎用CAD V-nasファイル
- zwd:フォトロン社「図脳WINCAD」
素材の表面を塗料で薄い膜をつくり、覆うのが塗装で、身の周りにあるあらゆるものが塗装されています。素材の表面を外気から遮断し、腐食や傷を防ぎ外観を美しく保ちます。
ただ単に色を塗っているわけではなく、同じ色を何層かに分けて、一定の厚さと強度を出したり、塗料の乗りが良くなるよう素材の表面をわざどざらざらにしたりと幾度もの見えない工程を経て、美しい表面ができていきます。
製品の試作では素材や塗料の色から塗装の厚みなど細部にわたって検討していきます。
ナノコンポジットとは、ある素材を1~100ナノメートル次元で粒子化したものを、別の素材に練り込み、分散させた「複合材料」の総称を言います。
ナノコンポジットを形成することで、引張強さ、弾性率、熱変形温度など、様々な物性向上がみられます。
その製造には特殊な工程を必要とするにもかかわらず、飛躍的な物性向上が期待できるため、急速に工業化が進んでいます。
車のエンジンルームやバンパーなどで、既にナノコンポジットは実用化されています。
さまざまな部品同士を簡単につなげたり、外したりできる部品、それがネジです。
一説には古代エジプト文明の時代からある構造とも言われますが、工業製品に使われるようになったのは、レオナルド・ダ・ヴィンチによってだそうです。
日本では1543年、種子島に火縄銃が伝わった時に初めてその仕組みを知りました。現在の工業製品のほぼすべての物でどこかにねじが使われているでしょう。
製品の試作においては、このねじの位置を決めることも大事な要素のひとつです。
発泡材とは内部に無数の気泡を含む樹脂のことで、元となる樹脂やゴムの中に発泡剤を加え、炭酸ガスやアンモニアガスを発生させてつくります。
ビールを注いだ時にむくむくと立ち上る泡をそのまま固めたようなものです。身近な発泡スチロールも発泡材のひとつです。
加工性が非常に良く、切る、削る、溶かすなどして手軽に思いのままの形状を作り出すことができるので、製品の梱包やデザイン試作の作成などによく使われます。
試作の初期段階で、コンピューターで作成した3Dデータの形状確認のため、この発泡剤をNCマシンで削りだしてみる工程を行うことがあります。
現在の工業製品の中でねじに並んでなくてはならないのがこの『ばね』です。
何らかの可動部分があるものにはだいたいこのばねのしくみが使われています。 携帯電話の折りたたみ部分もそうですし、ボタンを押したときにはね返ってくる力、これもばねによるものです。
製品の試作ではこのばねの跳ね返る力や動かすものの重さなどを考慮し、さまざまな材質、反発力のばねを検討していきます。
古くは動物を狩るときの罠や弓として、数万年前からばねの原理は人類に応用されています。 木の枝を押さえて、離すと跳ね返る。そんな動きを見て、私達の祖先も考え付いたのかもしれませんね。