量産試作

量産試作

量産試作では、実際に製品に近い形で部品を製作、組立てし、機能やデザイン(形状、色、素材、使い勝手)を満たすかどうか確認します。一般的に「試作」というと、この量産試作を指す場合が多いかも知れません。
この段階になりますと量産仕様書を作成します。機能試作時の機能仕様書が進化して行き量産仕様書ができあがります。この量産仕様書は、当然検証されて変化して行きます。

量産試作を行うには、全体の設計に合わせた部品の加工図面や電気の回路図、実装図が必要です。量産試作では、部品の一つ、ネジの1本まで具体化し、実際に組み立てられて、実用機として機能するかの確認をします。ここまでのプロセスで、もし間違った設計や加工があったり、曖昧な部分があったとしても、この段階で検証して行きます。むしろこの段階で問題点を、事前に確認することが大切です。

ここでは、量産を前提としています。一部の部品を簡易型などによってつくったり、機械加工で製作したりして、最終製品を意識した部品作りや装置作りを行います。とくに最終製品を作るための量産用の金型は、金額が大きくかかります。金型の変更は簡単には出来ません。従ってこのプロセスでいろいろな角度から充分検討する必要があるのです。

量産試作のコストは、ものによりバラツキもありますが、部品を一つ一つ機械加工で製作したり、NCマシンなどで削り出したりするため、場合によっては一部の部品が数十万円になることがあります。

またメッキや塗装など、最終仕上げも行います。ここでは量産に入る前の最終チェックを行います。
量産試作で検討される項目は、機能、デザイン(形状、色、素材、使い勝手)の確認以外にも、部品や製品の耐久性、部品点数を減らしてコストダウンできるかどうかの検討など多岐にわたり、一度の試作で終わることは極めて稀です。

量産試作一覧


① 仕様書全体の確認

お客様が製品を作る上で要求される基本的な項目をまとめて、文書化した書類が仕様書です。ここには製品に関する全ての情報が記載されています。本来はこの仕様書に沿って製作すれば問題ないのですが、計画当初から完璧な仕様書を製作することは困難です。

ここで大切なことは、仕様で求められる事柄の内、本質的なつまり、変えてはならない事項と、状況に応じて変化させても良い事項を選別することです。機能試作やデザイン試作を終了した時点でも、さまざまな問題点が出てきているはずです。ここでもう一度原点に返って、仕様を確認する必要があります。

機構的なもの、電気的なもの、デザイン的なもの、予算に関するもの、全てに渡り、再点検して下さい。

② 機械設計と加工

機能試作で確認した機構を、量産を前提に図面に表現してゆきます。機能設計で考え出したアイデアを実現するためには、どの様な方法が最適か、様々な角度から考えて機構を設計してゆきます。

機械の外観部(ケース)は、デザインを考慮して内部の機構部分が問題なく入るように設計します。部品に関しては、素材をどうするか、強度はどの様に考えるか、加工はどの様にするかコストを考えながら設計してゆきます。2D,3Dと言ったコンピュータを駆使した、設計ソフトを活用してます。

機械設計(3面)図

③ 回路設計と基盤製作

機能試作で、確認した回路や基板を量産向けに落としこんでゆきます。機能試作で使用した回路基板は、原始的な確認用のものです。

ここでは部品の調達、製造コスト、性能等機能試作で使用した回路基板とは異なる、最終商品をイメージした回路と基板を製作してゆきます。製品寿命が10年前後であれば、部品の調達も10年を考えて選択します。

従ってコストを考えながらの部品の選択と回路と基板の設計は、経験がないと簡単にはゆきません。ソフト開発も並行して考えなければならない場合があります。ソフトで何処までやるか、ハードとの組み合わせが設計者の腕の見せ所になります。

④ 部品の種類

量産試作で使用する部品の種類は、大まかに3種類に分類されます。

①ケース(入れ物)
筺体(きょうたい)と専門的には呼ばれています。要するに入れ物です。この部分はデザインと密接に絡んできます。その形状、色、質感は大変重要になってきます。量産試作では、このケースを実際に製作します。機械加工で製作する場合と、型を使って成形する場合、光造形のように樹脂を積層する場合等必要に応じて使い分けてゆきます。

②内部の機械装置
ここに使う部品は、製作するものによって様々です。ギア等の機械部品、モーター等の電機部品、LED等の電子部品、設計図からの機械加工部品等さまざまです。

③電気基板と電気部品
電気基板と電気部品は、量産レベルの部品を選定します。特に電子部品は生産寿命が短いものがあります。部品の選定には緻密な選択と豊富な経験が必要です。

⑤ 組立と動作確認

最終製品レベルの部品を調達し、ケースに機械装置と電気基板を組み込んでゆきます。実際に動かして動作の確認してゆきます。この確認は、仕様書に記載された項目に応じて検証してゆきます。

特に動くものを作ってゆく場合は、大変です。機能確認ではうまく行っていたものが、量産試作では動かない、制御がうまく行かない、予想以上に電力を消費する等ここでも様々な問題が起こってきます。場合によっては、機能試作に戻って検討する必要が、出てきます。

そのほかここではデザインの検討もしてゆきます。特に形状を変更するデザイン変更の場合、内部の装置の変更にも及んできます。デザイナーと装置設計者の激しいやり取りがここで展開してゆきます。ここをクリアーしない限り、量産の段階には進むことが出来ません。

⑥ 仕上げ

完成した製品の外観を整えるのが仕上げです。見た目の美しさや高級感を出すためのもの、可動部分のすべりを良くするためのものなど、目的にあわせて、さまざまな仕上げの種類があります。